褒めてもらえない寂しさ

他人の何倍がんばっても、褒めてもらえない。

平均的な能力の人の二、三倍は仕事をしている。

自分が仕事ができる人間である自覚は多少ある。

事実、仕事そのものは評価されていて、昇進の話だってくる。社内での評判だってそれなりにいい。

でも、「褒めて」はもらえない。

別に、褒めてもらいたいから仕事をしているわけじゃないけれど。

それでも、自分より少ない仕事量・難易度の低い仕事をしている人が

「がんばったね」「えらい」「ありがとう」「助かったよ」「成長したね」

なんて、声を掛けられているのを見ると、素直に、いいなあ、と思う。

彼/彼女より難しい仕事を、捌き切れないほどの量毎日こなしている私は、そんなふうに声をかけてもらったことがあっただろうか。

全くありがとう、と言われないわけじゃない。

ただ、感謝というよりは「やって当たり前」という認識を持たれていることがほとんど。

できて、当たり前。

やって、当たり前。

できていなければ、やっていなければ、「なんでできないの」「なんでしてないの」。

そんな言葉と、落胆と苛立ちのため息が待ち構えている。

それを聞くのが嫌で、追い立てられるようにタスクをこなしている瞬間が、どうしても、ある。

褒められたい。だって、人間だから。

褒められるために仕事をしているわけじゃないけれど。

でも、やっぱり褒められたい。人間だから。

人的資本は経営資本の中で唯一「感情」を持っている。

どんなに「合理的であれ」と自分に言い聞かせていても、日々の業務の中で、必然的に心と体は消耗していくもの。

ただただ楽しいだけの労働なんてものはない。

自分が所属する組織のために、難しいたくさんの仕事をこなしたとき、

「いつもありがとう、あなたがいてくれるから助かってるよ」

そんな感謝と労わりの言葉があったなら、消耗した心も、多少生き返る。

「がんばってよかった」「自分のやっていることは間違いじゃなかった」

と、自信が持てる。「明日もがんばろう」と、活力が持てる。

だけど、実際のところ、消耗しきった自分に待っているのは「あなたならできて当然でしょう」「なんでできないの」という言葉たち。

勝手に期待して、勝手に失望されて、ああ、なんて自分は損な役回りなんだろう、と思う。

仕事ができない人ほど褒められる

その人はプチ問題児。

なかなか仕事を覚えられなかったり。

やる気がなかったり。

感情的で、反抗的な態度を取ったり。

そんな人も、世の中にはまあまあいる。

管理職は、職場の生産性を上げる仕事、つまりは仕事のできない人を仕事ができるようにする仕事。

だから、できて当たり前のことでさえ、できたら大げさに褒めるし、

モチベーションや組織への帰属意識を高めるために感謝や労わりの言葉だって述べる。

「できません」「わかりません」と投げれば、「できるまで」「わかるまで」教えてくれる。

「わかりません」と言えば懇切丁寧に指導してもらえ、少しでも成功すれば褒めてもらえ、少しでも組織に貢献すれば感謝の言葉を述べられる。

「ありがとう、成長したね」なんて言われる。

そんな様子を見ていると、「できて当たり前でしょ」の一言だけで片付けられ、なんのフォローもされない自分との落差に悲しくなってしまうときもある。

褒められないのはあなたが優秀だから。

優秀だから褒められない、なんて変な話。でも、本当です。

優秀だから、評価されこそすれ、褒められることはありません。

だって、特別労わりの言葉をかけなくても、実務的フォローが少なくても、たくさんの難易度の高い仕事をこなしてくれるあなたは、とってもコストパフォーマンスがいいから。

少ない労力で、高い生産性を維持してくれるあなたは、「労働力」として非常に評価が高いのです。

だけれど、だからこそ、「褒める言葉」「感謝の言葉」「労わりの言葉」なんて「労力」をあなたにかけてはくれません。

理不尽ですよね。

残念ながら、これは優秀な人に与えられた「業(ごう)」のようです。

生まれながらに背負った業は、それぞれ深さが違います。税金に例えるとわかりやすいでしょうか。

高所得者は、所得に応じた高い税金を納めなければなりません。その納税額は低所得者のそれより高額になります。

それと同じことです。

あなたは優秀だから、そうでない人に比べ高い能力や実績を求められてしまう。

周りの他の人と同じ内容・同じ量の仕事で済ませてしまおう、なんて思った日には「脱税(職務怠慢)」の疑いをかけられてしまいます。

理不尽な話のように思えるけれど、自分は他の人と「適用税率が違うんだ」そう思うようになってから、私は少し自分の置かれた環境に開き直ることができるようになりました。

自分で自分を褒めてあげよう

周りの人が「当たり前」って思ってること。きっと全然「当たり前」じゃない。

「あの人ならできて当たり前でしょ」って思われてることも、きっと「生まれながらにして勝手にできるようになってた」なんてことはない。

きっと目に見えない努力があって、苦悩があって、その中から培われてきたものたちのはずです。

でも、それは周りの人には気づかれない。

だからこそ、自分で自分を認めて褒めてあげることが大切です。

自分だけは常に自分の味方でいてあげること。

職場の中では合理主義でも、仕事から離れた瞬間は自分のどんな醜い感情も受け入れて認めてあげること。

だって、自分の苦しみも悲しみも怒りも努力も、舞台裏を全部知っているのは自分自身だけだから。

誰もわかっちゃくれないね

他人の隠された苦労なんて

評価はあの世で気にしよう

夢と現の隙間だけが正しい


・・・でしょ?

勝ち戦/東京事変
(作詞:椎名林檎)

自分だけが、「今自分が積み上げているもの」をしっかり理解していればいい。

感謝や労わりの言葉はなくとも、

積み上げてきた実績と、今日まで作り上げてきた自分だけは自分を裏切らない。

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